NBAが正式発表、ティンバーウルブズとリンクスの売却が完了
2024年6月25日(現地時間24日)、NBAは理事会が満場一致で承認したことを発表し、ミネソタ・ティンバーウルブズ(NBA)とミネソタ・リンクス(WNBA)の売却が正式に決着。新オーナーは、実業家のマーク・ロア氏と元MLBスターのアレックス・ロドリゲス氏で、売却価格は15億ドル(約2170億円)に上りました。
この売却は、プロスポーツ史でも稀に見る長期化した交渉として注目されてきました。2021年に基本合意を結んだにもかかわらず、支払い遅延や資金調達の難航、さらには買収に絡んだプライベート・エクイティ企業の介入など、さまざまな障壁が交渉の進行を妨げていました。
長期抗争を経て、新時代のスタートへ
元オーナーのグレン・テイラー氏は、約30年にわたり球団の所有者を務めてきましたが、今回の決定により正式にオーナー職を退任。ロア氏とロドリゲス氏がフランチャイズの過半数株式を取得し、ウルブズとリンクスは新たな経営体制でのスタートを切ることになります。
両氏はNBA公式サイトを通じて、フランチャイズに対する熱意とビジョンを次のように語っています。
「我々はこの伝統あるフランチャイズを、世界的に評価され、地域社会に根付いた新時代の象徴へと導いていきます。ウルブズとリンクスが持つ可能性を最大限に引き出していく覚悟です」(ロア氏)
「スポーツは人々を結びつけ、社会を活性化させる力がある。私はチャンピオンシップの重みを知っています。ウルブズに勝利の文化を築く準備はできています」(ロドリゲス氏)
ロア&ロドリゲス、異色の経歴が結集
新オーナーのマーク・ロア氏は、フードテック企業「Wonder」の創業者であり、過去には「Diapers.com」や「Jet.com」をそれぞれAmazonとWalmartに売却した敏腕起業家。現在は未来都市「Telosa」の構想を推進するなど、テクノロジーと都市開発を融合した新しい価値創造にも注力しています。
一方のアレックス・ロドリゲス氏は、MLBのスーパースターとして14度のオールスター選出、ワールドシリーズ制覇を成し遂げたレジェンド。現役時代からビジネスにも注力し、不動産・投資会社「A-Rod Corp」を設立、数々の成功事例を築いてきました。スポーツとビジネス、両世界で結果を出した異色のコンビによるタッグが今後の運営に大きな期待を寄せられています。
経営体制の詳細とリーグ評価
新体制のもと、ウルブズではロア氏がガバナー、ロドリゲス氏がオルタネイト・ガバナーを務め、リンクスではその役割が逆転します。リーグ側も「リミテッドパートナーとしての長年のビジョンと情熱に敬意を表する」と公式声明で高く評価しており、両者のリーダーシップによって、より魅力的なフランチャイズ形成が期待されています。
2人は特に人材への投資、ビジネスモデルの革新、選手育成、そしてファン体験の向上に重点を置いており、ミネソタ地域への貢献姿勢も明言しています。
喫緊の課題はアリーナと財政再建
売却成立の祝賀ムードの裏側で、現実的な課題も山積しています。ターゲット・センターは1989年に開業し、2017年には約1億4500万ドルの大規模改修が行われましたが、老朽化は進んでおり、NBA全体で2番目に古いアリーナとされています。観客席の構造も収益性に課題を抱えており、新アリーナ建設も現実的な議題として浮上しています。
ロア氏は「このプロジェクトは簡単なものではない。創造性と長期的な計画が求められる」としつつも、新施設の重要性を認識していると発言しました。
キャップスペース問題と戦力維持のジレンマ
ウルブズは直近2年連続でカンファレンスファイナル進出を果たすなど好成績を残していますが、現在はセカンドエプロン(NBAの高額サラリー制限ライン)を大きく超過中。このままでは、贅沢税の支払いだけでなく、ドラフト指名権の凍結やミッドレベル例外の制限といった厳しいペナルティが課される可能性があります。
選手放出の選択肢も浮上しており、中堅クラスの契約選手をどう処遇するかがチーム編成の焦点となります。特にエドワーズ、ゴベア、タウンズら主力の年俸がチームの大部分を占めており、将来性と資金バランスの両立が求められます。
WNBAリンクスも再編が焦点、コリアーの残留交渉へ
一方、WNBAのリンクスも大きな局面を迎えています。リーグ屈指のスコアラーであるナフィーサ・コリアーは、2025年シーズン終了後にフリーエージェントとなる見込み。彼女の残留はチームの命運を握る重要案件とされており、契約更新交渉の行方に注目が集まっています。
ロドリゲス氏は「現場のバスケットボール判断には干渉せず、基盤作りと人材採用に注力する」とし、チーム運営の透明性と自主性を強調。クラブとしてのアイデンティティ確立に取り組む構えです。
“ツインシティーズ”に根ざした経営とビジョン
新オーナーたちは、フランチャイズの地元ミネソタ州に根ざした経営を強く打ち出しています。たとえアリーナ改修が難航しようとも、「移転は一切考えていない」と繰り返し明言し、地域コミュニティとの絆を重視する姿勢を崩していません。
これまでWNBA4回、NBAはプレーオフ進出こそ果たすものの頂点には届かなかった両チームが、次なるステージへ歩みを進めようとしています。ロア&ロドリゲス体制のもとで、ウルブズとリンクスは果たしてどのような進化を遂げるのか。注目すべき新章が始まろうとしています。