史上稀に見る三角トレードが成立|3チームが主力選手を交換
2025年7月8日、NBAのロサンゼルス・クリッパーズ、マイアミ・ヒート、ユタ・ジャズの3チーム間で大型三角トレードが正式に成立した。移籍対象となったのはノーマン・パウエル、ジョン・コリンズ、ケビン・ラブ、カイル・アンダーソンという、いずれも即戦力の実績ある選手たち。さらに、ジャズが2027年のドラフト2巡目指名権を追加で獲得する形となった。
今回の動きは、各チームがそれぞれのチーム事情やサラリーキャップ調整、ロスター再編のタイミングを見計らって実現した極めて実務的なトレードであるとされている。
ノーマン・パウエルがヒートへ|3P成功率41.8%の即戦力シューター
最も注目を集めているのが、ノーマン・パウエルのマイアミ・ヒートへの移籍である。パウエルは2015年にトロント・ラプターズからNBA入りし、2022年からはクリッパーズでプレー。昨季はレギュラーシーズン60試合すべてに先発し、平均21.8得点3.2リバウンド2.1アシストを記録。3ポイント成功率は41.8%という高精度を誇った。
10年目を迎えるベテランながら、オフェンスでの爆発力は健在。ヒートにとってはジミー・バトラーの不在時にも得点源として機能できる存在であり、攻撃の厚みを加える貴重な戦力といえる。ヒートの守備志向のスタイルともフィットしやすく、スイッチディフェンスにも対応できる機動力も兼ね備えている。
なお、今回の移籍の背景には、クリッパーズ側のサラリーキャップ調整の意図も透けて見える。カワイ・レナードやジェームズ・ハーデンとの再契約を見据えたチーム運営の一環として、パウエルの高額契約を整理する狙いがあったと見られる。
ジョン・コリンズがクリッパーズに加入|バックスから来たロペスと新コンビ結成
一方、パウエルの放出により空いたスポットに加わるのが、ジョン・コリンズだ。2017年にアトランタ・ホークスからドラフト指名を受けてNBA入りし、2023年からジャズでプレーしていたコリンズは、昨季40試合に出場し平均19.0得点8.2リバウンド2.0アシストという安定した数字を残した。
持ち味は爆発力あるダンクとリムラン能力、そして中距離でのシュートセンス。ペリメーターより内側での得点に秀でており、ピック&ロールのフィニッシャーとしても優秀だ。今季からは、同じく今オフにミルウォーキー・バックスから加入したブルック・ロペスとともに、フロントコートの屋台骨を担うことになる。
クリッパーズにとっては、ベテランと中堅のバランスが取れたフロントラインを形成できる点で、ポストシーズンへの布石となる補強といえるだろう。
ベテランのケビン・ラブとアンダーソンがジャズへ移籍
ジャズは、ケビン・ラブとカイル・アンダーソンの2人のベテランプレイヤーを獲得し、若手中心のチームに経験とリーダーシップを加える選択をとった。
37歳を迎えるラブは、2008年のドラフトでNBA入りし、キャリア中盤にはレブロン・ジェームズ、カイリー・アービングとともにキャブスの一員として2016年のNBAチャンピオンに輝いた。リバウンドとアウトサイドシュートに長けたストレッチビッグマンとして、今なお一定の存在感を放つ。
アンダーソンは、6チーム目となる新天地ジャズで、自身の持ち味である多彩なパスセンスとサイズのあるディフェンスで貢献が期待されている。UCLA出身の2人が同じチームで再びプレーすることも、ファンにとっては一つの注目ポイントだ。
2027年2巡目指名権の行方と、各チームの今後の補強戦略
このトレードにより、ジャズは2027年のドラフト2巡目指名権も獲得。若手育成を基軸とするフランチャイズ戦略においては、今後のドラフト戦略にも影響を及ぼす可能性がある。
一方で、クリッパーズとヒートは明らかに“勝負の年”としてシーズンを迎えており、今回の補強はロスター完成に向けた最後のピースとも言える。これらの動きが、プレーオフ争いの行方を大きく左右することは間違いない。
トレード直後の反応|SNSでも話題に
トレード成立後、当事者の一人であるケビン・ラブはSNSで次のように発言した。
「自分が数学の問題になるなんて思ってなかったよ。NBAへようこそ。」
この投稿はすぐにバスケットボールファンの間で拡散され、「ラブらしいユーモア」と評価される一方、「ラブがベンチでチームを支えるなら、若手にとってもプラス」といった実務的な意見も多く寄せられている。
また、アメリカ国内メディアの中には「今季最もインパクトのある三角トレード」と評する声もあり、注目度の高い移籍劇となっている。
まとめ|三者三様の意図が絡んだトレードの行方は
パウエルがヒートへ、コリンズがクリッパーズへ、ラブとアンダーソンがジャズへ――今回の三角トレードは、各チームが自軍の課題を解決し、シーズン後半を見据えた動きを加速させる戦略的な一手だった。
特に、プレーオフを目指すヒートとクリッパーズにとっては、戦術的な選手のハマり具合が今後の順位を大きく左右する。ジャズにとっても、ベテラン加入によるメンタリティの変化や若手の成長促進など、長期的視点での成果が期待される。
シーズン中のトレードとしては異例の規模感で動いた今回のディール。NBA2025-26シーズンは、この移籍劇の結果次第で、プレーオフ戦線の勢力図が大きく塗り替えられる可能性を秘めている。