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男子日本代表が韓国遠征で2連敗…ハーパージュニアの覚醒と課題浮き彫りの現実とは?

韓国遠征での2連敗、男子日本代表に突きつけられた現実

FIBAアジアカップ2025を控えた男子日本代表は、7月中旬に韓国で開催された国際強化試合に挑み、結果は2連敗。FIBAランキング21位の日本に対し、53位の韓国が連勝を収めたこのシリーズは、トム・ホーバス体制の代表チームにとって苦い経験となった。

試合内容から浮き彫りになったのは、攻守両面での連携不足と守備の綻びである。特に第2戦では、序盤こそ互角の戦いを見せたものの、第2〜3クォーターでディフェンスが崩壊。結果的に69−84と完敗を喫した。中でも3ポイントシュートへの対応、オフボール時のコミュニケーション不足は深刻で、ホーバスHCの目指すアップテンポかつプレッシャーディフェンス重視の戦略が機能しなかった。

ハーパージュニア、覚醒の兆しを見せたGAME2

この2試合の中で注目を集めたのが、22歳のガード、ジャン・ローレンス・ハーパージュニアの奮闘だ。ベンチスタートながらGAME2では3ポイントを連続で沈めるなど、自身の武器を最大限に活かし、約18分間で8得点、3リバウンド、2アシストを記録。GAME1で無得点に終わった悔しさをバネに、自ら積極性を取り戻した姿勢が光った。

佐々宜央アシスタントコーチの「もっと自分の武器を使え。気持ちで負けるな」という言葉が後押しとなり、ハーパーは持ち前のアウトサイドシュートだけでなく、ディフェンス面でも前から圧をかけるプレーで貢献。本人も試合後、「この経験から学ぶことが大切」と語り、課題と向き合う姿勢を見せた。

ホーバス体制の再構築課題:ディフェンスの再定義

韓国戦で明らかとなった最大の課題は「ディフェンスの綻び」だ。日本は長らく、スイッチディフェンスとヘルプローテーションを軸に守りを構築してきたが、韓国の速いボールムーブとアウトサイドからの攻撃に対応しきれず、コミュニケーションミスが連鎖的に失点へとつながった。

これにより、ハーフコートで守りきれない局面が増え、トランジションでも後手を踏む場面が目立った。特に若手主体のロスター構成では、守備強度と連携は今後の大きな伸びしろと課題両面を併せ持つ。

また、3ポイントに対する「打たせすぎ」も目立ち、ゾーン対応時のローテーションやスイッチの判断基準など、戦術理解の浸透度にばらつきがあった点も気がかりだ。これはチームに一体感がまだ構築されていないことの表れでもある。

若手主体の布陣が抱える現実と可能性

今回の韓国遠征では、河村勇輝をはじめとした主力組に加え、テーブス流河、山﨑一渉、狩野富成ら次世代の主力候補が数多く招集されている。だが、経験不足からか連携や判断力に課題が残る場面も多く、ホーバス体制の新たな武器となるには今後の成長が鍵を握る。

一方で、このような若手起用に関しては、ABEMA解説でも話題となった通り、篠山竜青や辻直人といった元日本代表経験者も「アジアカップをトライアウト的に位置づけるには非常に意義がある」と評価。今大会での経験が、選手層の底上げに繋がるとの期待も大きい。

特に、川崎ブレイブサンダースのルーキーコンビである米須玲音や山内ジャヘル琉人、琉球の脇真大、宇都宮の小川敦也などは、将来的に代表のコアメンバーとなり得る素材であり、今大会での起用が現実的な「未来の地図」へと繋がっている点は注目に値する。

アジアカップへ向けた残された時間

日本代表は7月19・20日には千葉・LaLa arena TOKYO-BAYにてデンマーク(FIBAランキング59位)と強化試合『SoftBank CUP 2025』を戦う予定。これらの試合で、今回の韓国戦で浮き彫りになった課題に対してどのような修正がなされるかが焦点となる。

8月5日からはサウジアラビアでのFIBAアジアカップ2025本戦が控えており、残された時間でどれだけチームを成熟させられるかが勝負の分かれ目だ。

また、アジアカップはパリ五輪後の世代交代を占う大会でもあり、若手の活躍は日本バスケ界の未来に直結する。各選手にとっても、自身の価値を示す貴重なチャンスであることは間違いない。

ハーパージュニアに見る“守備の柱”としての可能性

今大会においてハーパーが見せた「前からのディフェンス圧力」は、日本代表がグローバルスタンダードに近づくために不可欠な要素である。サイズでは不利な日本が、機動力と連動性で優位性を見出すためには、ハーパーのようなディフェンスを見せられる選手の台頭が不可欠。

本人も「背中で見せる」と語るように、若手ながらもチームの中心を目指す覚悟を持つその姿勢は、チームにとっても心強い。河村勇輝と共に「ディフェンスで試合を作る」日本代表の未来像にとって、ハーパーの存在は大きな意味を持つだろう。

また、メンタルの強さも見逃せない要素だ。初戦で無得点という厳しい状況にもかかわらず、翌試合でしっかりと修正し、プレーで応えたその姿勢は、今後のキャリアにも大きく影響を与えるはずだ。

まとめ:韓国遠征は痛みと学びの連続だった

今回の韓国遠征で得たものは、何よりも「現実」と「学び」である。簡単には勝てない国際舞台の厳しさと、それに立ち向かうための課題が明確になったことで、アジアカップ本戦への調整がより実践的なものとなった。

ハーパージュニアをはじめとする若手の台頭がチームに化学反応をもたらし、8月の本番では再び強い日本代表が戻ってくることを、ファンも心から願っている。

これから迎える強化試合、そしてアジアカップ本戦は、単なる結果以上に「次世代日本代表の成熟度」を問う試金石だ。その過程の中で、ハーパーのような“成長する存在”がチームの中心になっていくことが、日本バスケの未来を照らす鍵となるだろう。