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コーリーJAPANが見せた再生の光──女子アジアカップ2025準優勝と“世界への再挑戦”の全貌

コーリーJAPAN始動——わずか2カ月でアジア準優勝


2025年7月、バスケットボール女子日本代表はFIBA女子アジアカップ2025で7大会連続の決勝進出を果たし、準優勝という結果を残した。オーストラリアに惜敗したものの、コーリー・ゲインズ新ヘッドコーチのもとで新体制となってわずか2カ月のチームとは思えない成長を見せた今大会。

7月22日に都内で行われた記者会見では、ゲインズHCが30分以上にわたってチームの現状と未来について語り尽くした。その内容からは、単なる結果以上に、未来を見据えた確かな「手応え」と「覚悟」が読み取れた。

「育成は目標達成」田中こころと薮未奈海が急成長


今大会、ゲインズHCが掲げた目標は2つ——「育成」と「優勝」。そのうち育成に関しては「完全に達成できた」と明言した。

とくに評価されたのが田中こころと薮未奈海の2人。田中はクラブチームではシューティングガード(2番)を務めていたが、代表ではポイントガード(1番)にコンバートされ、短期間で新しい役割を習得。ゲインズHCは「タフ・ラブ(厳しい愛情)」を注ぎ、田中もその期待に応えた。

薮は、攻守両面でのプレースタイル変革を求められた。スピード、判断、体の使い方まで一新する指導の中、彼女は自らの殻を破って飛躍。「まだ成長の余地はあるが、彼女たちはこの短期間で素晴らしい変化を遂げた」と評価した。

このような若手の台頭は、GL3x3においても選手育成やポジション転換のヒントとなるだろう。

ゲインズ式「戦術コード」とディフェンス革命


ゲインズHCがもたらした変革の一つが、言語の壁を乗り越えるための**「ハンドシグナル式戦術指示」**だ。日本語を話せない彼は、70種類以上のハンドジェスチャーを駆使し、試合中も瞬時に戦術変更を伝える。

– 腕時計をタップ→ディレイ(セットプレー)
– 足を鳴らす→ステップアップ(スクリーン)

この戦術コードはWNBAでも1年かけて浸透させたが、日本代表はわずか2週間半でマスター。ゲインズHCも「選手たちの理解力と集中力は驚異的だった」と絶賛した。

また、ディフェンスでは1−3−1ゾーン→3−2ゾーン→マンツーマンへの「チェンジングディフェンス」を導入。味の素NTC合宿で課題とされていたこの守備戦術は、大会後半で日本の大きな武器となった。

中国戦は“準備の勝利”、決勝・豪州戦は“悔しさの糧”

準決勝での中国戦は、今大会屈指のハイライトだ。事前の中国遠征は、単なる練習試合ではなく“偵察任務”だったとゲインズHCは語る。

「中国のスタイルや選手の癖を徹底的に分析し、それに応じた練習を合宿初日から行っていた」。結果、日本は高さで劣る中国に対し、組織力とスピードで完全に上回った。

一方、決勝のオーストラリア戦は、予選で一度敗れていた相手。ゲインズHCは「予選でのミスは私の責任」と断言。決勝では修正を試み、第4Qには同点に追いつくも、あと一歩届かず。

「言い訳はしない。選手たちは疲れていたが、それもバスケの一部。だが、次に戦えばまったく違う試合になるはずだ」と力強く述べた。

“世界からのリスペクト”を取り戻すという自負

会見の最後、ゲインズHCはこう語った。

>「この大会で、我々は再び世界から注目され始めたと感じている」

日本女子代表はここ数年、強豪国との差を指摘されていたが、今回の戦いでその評価を覆しつつある。現地には10名以上の日本人ファンが応援に駆けつけており、その存在にも感謝の意を述べた。

「どうか、辛抱強く見守っていてほしい。次にお見せする代表は、さらに強くなって戻ってくる」

この言葉には、単なる結果以上の“チームとしての進化”が詰まっている。

GL3x3の視点:変革と文化の融合が未来を切り拓く

今回のゲインズHCの取り組みは、3×3界にとっても極めて示唆的だ。

– **言語の壁を越える戦術設計**
– **若手の大胆なポジション転換**
– **ディフェンスの柔軟性と切り替え力**

これらはすべて、スピードと戦術理解が求められる3×3にもそのまま応用できる要素だ。特に、短期間でチームを再構築するプロセスは、シーズン制ではないGL3x3のチームビルディングにもヒントを与える。

また、「世界からのリスペクトを再び得る」というミッションは、3×3でも同様に重要なテーマとなる。日本のバスケ文化が世界で通用することを示した今、次はGL3x3がその証明者となる番だ。

まとめ:ゲインズJAPANの船出が照らすバスケ日本の未来

準優勝という結果以上に、女子日本代表が世界に示した「進化と結束の姿勢」は、新時代のバスケットボールを象徴するものであった。

「育成」と「勝利」の両立、そして戦術・組織・文化の融合——コーリー・ゲインズHCが築こうとしているのは、単なる“強いチーム”ではなく、“未来に繋がるチーム”である。

2026年のFIBA女子ワールドカップに向けて、コーリーJAPANはすでに歩みを進めている。そしてその歩みは、GL3x3をはじめとした次世代バスケットボールの道しるべにもなっていくだろう。

女子日本代表がアジアカップ白星発進!薮未奈海が19得点の活躍でレバノンに接戦勝利

女子日本代表がアジアカップ2025初戦で白星スタート

2025年7月13日、中国・深圳で幕を開けた「FIBA女子アジアカップ2025」。世界ランキング9位の女子日本代表は、初戦で同54位の女子レバノン代表と対戦し、72-68で勝利。2大会ぶりの王座奪還に向けて白星発進を果たした。

ただし、格下と目されていたレバノン相手に苦戦を強いられたこの試合は、終始アップダウンの激しい展開となり、最終盤まで手に汗握る内容だった。

日本代表にとっては課題と希望の両方が見えた初戦。中でも、FIBA公式戦初出場となった薮未奈海(デンソー)が19得点のチーム最多得点を記録し、存在感を発揮したことが最大の収穫となった。

第1クォーターでまさかの10点ビハインド、日本は劣勢からスタート

試合の立ち上がり、日本は連続失点でスタート。ファウルトラブルに陥ったことで守備のバランスが崩れ、レバノンに0-10のランを許す苦しい時間帯を迎える。

2分過ぎ、田中こころ(ENEOS)が3ポイントを決めて日本初得点を記録。その後、渡嘉敷来夢(アイシン)や馬瓜ステファニー(スペイン/カサデモント・サラゴサ)の得点で一時リードを奪うが、守備の脆さが露呈し、16-26と10点のビハインドで第1Qを終えた。

第2クォーターで反撃、薮未奈海が要所で得点を重ねる

続く第2Qは、宮澤夕貴(富士通)のスリーポイントで反撃の狼煙を上げると、今野紀花(デンソー)のドライブや高田真希(デンソー)、馬瓜、薮の3連続3Pなどで一気に同点に追いつく。

田中の得点で逆転するも、再びリードを許すシーソーゲームに突入。終盤には薮と東藤なな子(トヨタ紡織)の連続スリーポイントが決まり、ハーフタイム時点で44-41とリードを奪い返した。

このクォーターだけで28得点と、攻撃の流れを掴んだ日本は、テンポの速いオフェンスで試合を盛り返した。

第3Q~終盤は接戦、薮の勝負強さが光る

第3クォーターでも星杏璃(ENEOS)がスリーポイントを決めるなど得点は重ねたが、レバノンの粘り強いディフェンスに苦戦。川井麻衣(デンソー)や栗林未和(東京羽田)らベンチメンバーも貢献し、56-50と6点リードで最終クォーターへ。

第4クォーターは開始から4分47秒で1点差まで詰め寄られる展開に。ここで頼もしかったのが薮だった。フリースローを2本沈めると、鋭いドライブからレイアップ、さらに5本目となる3ポイントを沈める勝負強さを発揮。

終盤に再びレバノンが猛追して2点差に迫るも、日本は集中力を切らさず、最終スコア72-68で辛勝となった。

全選手起用で層の厚さを確認、新戦力が活躍

この試合では日本代表全選手が出場。ベテランから若手まで幅広くローテーションが組まれ、今後の試合を見据えたテスト的な側面もあったと考えられる。

中でも、薮未奈海はFIBA公式大会初選出にもかかわらず、19得点をマーク。3ポイントシュートは5本中5本成功という完璧なスタッツで、日本の攻撃を牽引した。

また、初代表の田中こころも11得点と堂々のデビューを果たし、これまで代表を支えてきた髙田や渡嘉敷といった中核選手との連携も良好。GL3x3的観点からも、スキルとフィジカルを兼ね備えた次世代ウィングとして注目される存在だ。

女子代表が目指す“王座奪還”への課題とは?

苦戦を強いられたとはいえ、内容を見ると要所でのシュート精度、ターンオーバー、ファウル管理など細かな修正点が浮き彫りになった。特に立ち上がりのディフェンスとリズムの作り方は、強豪との対戦時に命取りとなりかねない要素だ。

しかしながら、ハーフタイムから後半にかけての修正力や、若手の躍動ぶりは今大会における明るい材料。髙田、渡嘉敷といった実績あるベテランがチームを支えつつ、新戦力が台頭する構図は、日本女子代表が再びアジアの頂点を目指す上での理想形だろう。

次戦の相手はフィリピン、さらなる完成度が求められる

第2戦では、FIBAランキング44位のフィリピンと対戦予定。初戦で見えた課題をいかに修正できるか、そして再び薮や田中といった新戦力が継続的に活躍できるかが注目される。

フィリピンは3×3でも活躍する選手が多く、スピードとアウトサイド主体のバスケで知られる。GL3x3的視点では、スイッチディフェンスや1on1の攻防が試合のカギを握る要素となるだろう。

まとめ:若手の台頭と勝負強さでつかんだ大きな1勝

格下相手に苦しんだものの、結果として“勝ち切れた”ことが日本代表にとって何よりの収穫だった。若手の成長とベテランの支えが融合しつつある現在、チームは新たなフェーズに入っている。

薮未奈海の爆発的なスリーポイントや、田中こころの冷静な判断力は、今後の日本代表を象徴する存在となる可能性を秘めており、GL3x3でも注目すべき若手プレーヤーとして評価できる。

王座奪還という大きな目標へ向けて、日本女子代表はこの1勝を土台にさらなる飛躍を目指す。

田中こころ、FIBA女子アジアカップへ決意表明「アウェーがお葬式みたいになるのが好き」

中国との強化試合での敗戦から得た手応え


2025年6月28日、「FIBA女子アジアカップ2025」に向けた第4次強化合宿中の女子日本代表(FIBAランキング9位)のメディア対応が行われ、注目の若手・田中こころ(ENEOSサンフラワーズ)が登壇。6月上旬に開催された強化試合での手応えや今後の意気込みを語った。

田中は「三井不動産カップ2025(愛知大会)」でA代表初招集ながらスタメンポイントガードとしてチームをけん引し、大会MVPを獲得。続く中国遠征では2連敗を喫したが、「課題は多かったけど、スピードやシュート力は出せた」と成長への自信を見せた。

“高さ”だけではない現在の中国代表に驚き

田中はU18日本代表時代にも中国と対戦経験があり、「当時は長身選手にボールを入れて得点するだけだった」と語る。しかし今回の中国代表は「ガードも技術が高く、個々のスキルもまったく違う」と印象を新たにした。

それでも、日本代表らしく「速いバスケット」を展開すべく、ポイントガードとしての自覚を強調。「ボールプッシュを意識して、攻撃の起点として責任を持ちたい」と意気込んだ。

「アジアNo.1ガード」への期待と進化する意識

高校時代はシューティングガードとして活躍した田中。しかし、現ヘッドコーチのコーリー・ゲインズ氏からは「アジアで一番のガードになれる」と高く評価されており、田中自身も「その期待に応えたい」と強い決意を表明。

当初は新ポジションへの不安もあったが、「何でもしていいポジションだとコーリーに教わってからは、考え方が変わった」と語り、今では攻守に渡る司令塔としての自覚が芽生えている。

完全アウェーも歓迎「シーンとなるのが好き」

田中は観衆1万人超の有明アリーナでも「緊張は少しあるけど、思いきってやるだけ」と語る。中国遠征では観客全員が相手チームを応援する完全アウェーの雰囲気だったが、「逆に好き」とメンタルの強さを見せた。

「誰も私を見ていない感じがする中で、活躍するとベンチ側が黙って、シーンとなるのがすごい好き。アウェーが急にお葬式みたいになるのがいい」と独特の表現で強心臓ぶりをのぞかせた。

アジアカップは通過点、さらなる進化へ

田中は「アジアカップは通過点」と語りつつ、今大会でも全力でアピールする意向を示した。「シュート力はもちろん、パスやアグレッシブなディフェンスなど、新しい一面も見せたい」と語り、ポイントガードとしての新たな引き出しを増やしつつある。

まとめ|“新時代の司令塔”として世界へ

中国戦での敗戦にも前向きに向き合い、自らの成長と責任を実感している田中こころ。速い展開と強気な姿勢を武器に、アジアの頂点を目指すチームをけん引していく姿に、今後ますます注目が集まるだろう。

大胆かつ繊細なプレースタイルに加え、観客を黙らせるほどのメンタル。田中こころは、“次世代の司令塔”として、FIBA女子アジアカップの舞台で一躍ヒロインとなる可能性を秘めている。