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【金沢武士団とは】B3リーグの激動を生き抜くクラブの現在地と未来像を徹底解説

金沢武士団とは──石川県に根ざす“武士道”クラブの象徴


金沢武士団(かなざわサムライズ)は、石川県金沢市をホームタウンとするB.LEAGUEのB3リーグ所属クラブです。運営は「北陸スポーツ振興協議会株式会社」。創設は2015年と比較的新しく、クラブ名は「金沢」「武士」「団」とすべて漢字で構成される珍しいネーミングが話題を呼びました。

このネーミングは、加賀藩の歴史的背景と地元文化を重視したものであり、「武士道」や「サムライ精神」をスポーツに落とし込むというメッセージが込められています。

チームカラーは「サムライズイエロー」と「サムライズブラック」。マスコットキャラクターは前田利家にちなんだ“黒い柴犬”の「ライゾウ」。金沢らしい武士文化の融合は、Bリーグの中でも特に際立った存在感を放っています。

クラブ設立の背景とB2昇格までの急成長

金沢武士団は、bjリーグ最後のエクスパンション(2015–16)で参入し、初年度から27勝を挙げてプレーオフ進出に成功。B.LEAGUE統合後はB3リーグに参加し、2016-17シーズンにはレギュラーシーズンで圧倒的な29勝3敗を記録して初代王者となります。

この活躍が評価され、2017-18シーズンからはB2リーグへの昇格が正式に決定。当初は観客動員やグッズ販売も好調で、石川県内外から多くの注目を集めました。

経営難によるB3降格──ライセンス失効の現実

順風満帆に見えた金沢武士団ですが、2018-19シーズンには経営赤字が深刻化。3期連続赤字というB.LEAGUEのライセンス基準に抵触し、成績にかかわらずB2ライセンスが不交付となりました。

この影響でクラブはB3リーグに降格。選手・スタッフの大量退団や、年俸総額を2500万円に抑えるコストカット策が実施され、苦難の再出発を余儀なくされました。B2時代の年俸は1億円規模だったため、実に4分の1以下まで縮小されたことになります。

地域密着型へと舵を切った“七尾シフト”

2022年、クラブは戦略転換を図り、本拠を金沢市から石川県七尾市へと事実上移行。七尾市との「サポートタウン協定」を結ぶとともに、練習施設や事務所も段階的に移転しました。

この背景には、金沢市内での練習拠点確保が困難になったこと、また地域密着型クラブとしての生き残りを模索する姿勢があります。七尾市は地元住民の支援も厚く、ホームゲームの盛り上がりに貢献しています。

国際支援のモデルケース──ウクライナ選手の受け入れ


2022年8月、金沢武士団はウクライナからの避難民3選手(アンティボ、ボヤルキム、ティトブ)を受け入れ、話題を呼びました。この取り組みは日本財団および七尾市の協力のもと実現。

特にPGイホール・ボヤルキムは、後にB1・アルバルク東京でも短期プレーし、B1レベルでも十分通用する実力を示しました。クラブにとっても社会貢献と戦力強化を両立する大きな成功事例となっています。

令和6年能登半島地震──クラブを襲った最大の危機

2024年1月1日、石川県を襲った能登半島地震は、金沢武士団に深刻な影響を与えました。拠点である七尾市の田鶴浜体育館は避難所となり、選手寮も被災。クラブは一時活動休止を余儀なくされ、1月に予定されていた試合はすべて中止。

しかし、クラブは地域と連携しながら再起を図り、2月にはアウェー戦から復帰。岐阜スゥープスとの一戦では「Wホームゲーム」と銘打ち、岐阜側の支援を得て金沢の応援スタイルで演出されました。

さらに、豊田合成スコーピオンズとの協力により、愛知県でチャリティマッチを開催。3月には代々木第二体育館で「金沢武士団in東京」イベントも行い、逆境を力に変えるクラブの姿勢が全国のファンに感動を与えました。

2024-25ロスターと注目選手


新たに松藤貴秋HCを迎えた2024-25シーズン。ロスターは以下のようにバランス良く構成されています:

田中翔大(SG):クラブの精神的支柱で主将。
花田唯翔(PG):若きフロアリーダー。ドライブ力が魅力。
ペトロフ(C):2m超のウクライナ出身センター。インサイドの要。
スティーブン・グリーン(SF):攻守に万能型のベテラン。
ソンスーヤオ(C):台湾出身のアジア特別枠選手。

選手構成は、若手主体ながら国際色豊かで、B3内でも際立った個性を持っています。戦術面では、スモールラインナップとスイッチディフェンスの導入が注目されます。

B3全体の動向と金沢の立ち位置

B3リーグは現在、全国から20チーム前後が参加し、地域密着型のクラブが多数を占めています。中でも金沢武士団は、支援型興行や災害復興マッチの開催など、単なる勝敗だけにとどまらない価値を提供しています。

また、観客動員やスポンサー集めにも苦戦する地方クラブが多い中で、金沢はユニフォームスポンサー13社、地元企業とのタイアップ施策など、堅実な運営姿勢も評価されています。

GL3x3や今後の展望──3人制バスケとの親和性

今後注目したいのは、3×3や「GL3x3」との連携です。金沢武士団はロスターの選手層が厚く、短期契約選手も多いため、3人制バスケとの親和性が高いクラブといえます。

– 夏季休暇を利用した3×3トライアルマッチの実施
– 七尾市内での3×3ユースイベントの共催
– 地元商店街や観光地と連携したストリートバスケイベントの展開

など、GL3x3側からのアプローチに対しても積極的な姿勢を見せれば、B3クラブの新たなビジネスモデルとなる可能性があります。

まとめ:逆境を“力”に変えるクラブの未来に期待

金沢武士団は、華々しい成績こそないものの、創設からわずか10年で「地域密着」「国際支援」「復興活動」と多くのストーリーを生み出してきました。

能登地震を乗り越えた2025年以降、クラブは真の意味で“武士道”を体現する存在へと変貌を遂げつつあります。GL3x3をはじめとした新たなリーグ・コミュニティとの連携も視野に、地域の希望となる存在として走り続ける金沢武士団に、今後も目が離せません。