B1昇格」タグアーカイブ

【B1昇格】アルティーリ千葉の快進撃と野心的戦略――創設5年で成し遂げた挑戦の軌跡

創設5年でB1昇格――アルティーリ千葉が描く“逆転劇”のシナリオ


2020年に産声を上げたアルティーリ千葉は、わずか5年で日本最高峰のB1リーグ入りを果たした新興勢力だ。運営母体はIT企業「アトラエ」の出身者が中心となって設立した株式会社アルティーリ。企業マインドとバスケットボールの融合を体現したこのクラブは、創設当初から「5年で日本一」を掲げて快進撃を続けてきた。

ホームタウンは千葉県千葉市。ホームアリーナは千葉ポートアリーナで、収容人数は7,512人。チームカラーはブラックネイビー。クラブ名の「Altiri」はエスペラント語で「惹きつける」を意味し、観客・ファン・地域を魅了する存在を目指す。

B3参入からの道のり――1年目でB2昇格を決めた衝撃


2021-22シーズンにB3リーグに初参入。初年度から37勝7敗と圧倒的な戦績で2位に輝き、昇格決定戦でトライフープ岡山を100-69で圧倒。たった1シーズンでB2への昇格を決めた。この時の指揮官は元オーストラリア代表HCのアンドレ・レマニスで、海外スタイルを積極的に取り入れた戦術が功を奏した。

この年にはJR千葉駅・千葉みなと駅、京成千葉中央駅などの公共交通機関にラッピング広告を展開し、都市文化賞を受賞するなど地域との連携も強化された。

“B2の暴君”となったアルティーリ千葉

2022-23シーズンからはB2東地区で戦い、3年連続で東地区優勝を果たした。特に2023-24、2024-25シーズンには圧倒的な戦績を記録。2024-25は57勝3敗(勝率.950)というB2史上最高成績を叩き出し、Bリーグ史上最多勝利・最高勝率を更新した。

それでも2023年・2024年はプレーオフで越谷や長崎に敗れ、B1昇格を逃す悔しい結果に。しかし、2025年のプレーオフでは、信州ブレイブウォリアーズを2連勝で下し、ついにB1昇格を勝ち取った。

停電による“史上初”の同時優勝

2025年のB2ファイナルでは、富山グラウジーズとの第3戦が千葉ポートアリーナの停電により中止。試合の再実施は行われず、史上初の「同時優勝」としてアルティーリ千葉と富山が並び称された。この騒動の中でも冷静さを保ったクラブの姿勢と対応は評価された。

また、このシーズンのプレーオフMVPには、東海大学から特別指定で加入した若き司令塔・黒川虎徹が選ばれ、ファンの心をつかんだ。

クラブを支えたレジェンドたちの存在


アルティーリ千葉の快進撃の背景には、クラブ黎明期からチームを支えたレジェンドの存在がある。初年度から活躍した岡田優介や大塚裕土は、そのリーダーシップとプレーで若手の模範となった。大塚は37歳にしてなおチームのキャプテンを務め、3P成功率No.1を獲得するなど、年齢を感じさせないパフォーマンスで“勝てるチーム”を体現した。

また、外国籍選手でもアシュリー、ポーター、パードンらがシーズンを通して安定感のあるインサイド支配を見せ、アルティーリの攻守に厚みを加えた。

先進的なSNS戦略とファンエンゲージメント

アルティーリ千葉はスポーツビジネスとしての見地でも極めて革新的だ。InstagramやX(旧Twitter)、YouTubeに加えて、自社サイトでのストーリーテリング型コンテンツや限定会員向け情報など、IT起業出身の代表・新居佳英の経営感覚が如実に表れている。

ファンの呼称「A-xx(アックス)」は、クラブの一員として共に歩む意思を表すものであり、観客を「参加者」に変えるプロセスが徹底されている。単なる観戦ではなく、価値観の共有がチーム文化を深化させているのだ。

B.LEAGUE PREMIER参入への準備と意義

2026-27シーズンからスタートするB.LEAGUE PREMIER(通称:Bプレミア)には、すでに参入が決定済み。これに向け、2024年から千葉ポートアリーナの改修工事が行われており、Bプレミア基準を満たす施設整備も着々と進んでいる。

また、ヒューリック主導で2030年開業予定の2万人規模アリーナも、単なるホームアリーナを超えた「千葉の文化中核地」として機能することが想定されており、長期的な都市価値の向上にもつながる構想である。

“赤”との共存――千葉ジェッツとの共栄圏構想

同じ千葉県を拠点とする千葉ジェッツふなばしの存在は無視できない。ジェッツは2011年創設で全国区の人気を誇るが、アルティーリはわずか5年でその背中を捉える存在に成長。

今後は両クラブが“共栄圏”として千葉県全体のバスケットボール熱を高め、自治体との連携、地域の教育・健康促進、観光資源の開発など、社会的価値を創出する動きが期待されている。

下部組織と育成ビジョン――U15・U18・特別指定枠

アルティーリ千葉は2023年にU15・U18を立ち上げ、育成にも力を入れている。トップチームには特別指定選手として若手有望株が続々と合流。黒川虎徹や渡邉伶音のように、大学バスケ界から即戦力を引き入れるスカウティング体制も整っており、継続的なチーム強化を視野に入れている。

医療面では千葉大学医学部附属病院と提携し、怪我予防・リカバリー・フィジカル強化を医療的アプローチから支援している点も特筆すべきだ。

まとめ:惹きつけ、勝ち続ける“異端の旗手”

「惹きつける」という意味のクラブ名に相応しく、アルティーリ千葉はその実力と戦略で、Bリーグに旋風を巻き起こしている。B1昇格は通過点に過ぎず、2026年から始まるBプレミアでは、真の“頂点獲り”が始まる。

地方都市クラブの理想像として、そしてファンと地域が一体となるクラブ文化の模範として、アルティーリ千葉の挑戦はこれからも注目され続けるだろう。

越谷アルファーズが描くBリーグの未来図|B1昇格までの歩みと地域密着型クラブの挑戦

越谷アルファーズとは──埼玉初のプロバスケットボールチーム

越谷アルファーズ(Koshigaya Alphas)は、埼玉県越谷市を本拠地とするBリーグ所属のプロバスケットボールチームである。1997年に「大塚商会アルファーズ」として誕生し、2024-25シーズンよりB1リーグへの参入を果たした。

チーム名の「アルファーズ」は、親会社である大塚商会の製品名や企業ブランドに多く見られる「α(アルファ)」から着想を得たもの。Bリーグへの参入以降は、地域との連携や組織運営に力を注ぎながら、急速に成長を遂げている。

創設からB1昇格までの歩み──25年の歴史

創設当初は関東実業団リーグの6部からスタートしたアルファーズは、徐々に実力を蓄え、2004-05シーズンには日本リーグへ「特別推薦枠」として参戦。栃木ブレックスへ一時移籍した経験を持ちながらも、その後は地道に昇格を重ねていった。

JBL2、NBDLを経て2016年にB3.LEAGUEへ参入。2018年に運営が「フープインザフッド」に譲渡されたことで独立色が強まり、翌2019年にはB2昇格を果たす。そして2024年、ついにクラブ初のB1昇格を達成した。

昇格の原動力となった3つの要素

B1昇格の背景には、戦略的な補強、組織の再編、そして地元越谷市との強固なパートナーシップの3要素があった。

  • 戦略的補強:アイザック・バッツやジャスティン・ハーパー、井上宗一郎らB1経験豊富な選手を次々と獲得。
  • コーチング体制の整備:安齋竜三HC体制が2年目に突入。元宇都宮ブレックスHCであり、戦術構築に長けた名将の手腕が光った。
  • 地域連携と施設拡充:越谷市を中心に春日部市など複数自治体と連携し、ホームアリーナの安定確保や練習拠点「ALPHAS.HOUSE」の整備を進行。

B2ファイナルで準優勝、悲願のB1昇格へ

2023-24シーズンの越谷アルファーズは、B2東地区で45勝15敗の好成績を残し、2位でプレーオフに進出。クォーターファイナルでは熊本に2連勝し、セミファイナルでもA千葉を撃破。B2ファイナルでは滋賀に敗れたものの、成績によりB1昇格が確定した。

この快挙はクラブ史上初の快挙であり、埼玉県勢としても異例の成功例である。

運営会社と体制強化──株式会社アルファーズへの再編

2023年8月、運営法人は社名を「株式会社フープインザフッド」から「株式会社アルファーズ」へと変更。代表には上原和人が就任し、経営体制の刷新を図った。これにより、チーム運営と地域経済の結節点としての役割も明確化された。

クラブロゴ・カラーの刷新とブランディング戦略

B1参入にあたり、2024年7月からは新たなクラブロゴの使用も開始。従来のバーガンディーカラーをベースにしつつ、より明るいトーンへとリデザイン。サブカラーにはゴールドとブラックを据え、現代的な印象を強めている。

地域との連携──“まちづくり”への挑戦

アルファーズは単なるプロクラブとしてではなく、地域振興の担い手としても機能している。越谷市や春日部市と連携し、小中高生向けのアカデミー運営、3×3チーム「ALPHAS.EXE」の設立、チアチーム「アルファヴィーナス」など多面的に活動。

2024年4月には「B.プレミア」参入に向けた新アリーナ建設構想も発表され、越谷サンシティ再開発との連動も注目されている。

マスコット・アルファマンとファン文化

2019年に誕生したマスコットキャラクター「アルファマン」は、元SBAのスーパーPGという設定を持つユニークな存在。ホームゲームでは「アルファメイト」と呼ばれるファンとともに会場を盛り上げ、地域密着型クラブの象徴となっている。

初のB1シーズンと今後の展望

2024-25シーズンはB1における初年度。開幕戦から連敗が続いたが、10月19日の島根戦でB1初勝利を挙げた。その後も苦戦を強いられたが、勝利を重ねる中でファン層の拡大と経験値の蓄積が進んだ。

成績は19勝41敗で東地区6位となり、プレーオフ進出は逃したが、来季以降の基盤は整いつつある。

退団選手と新陣容への期待

シーズン終了後には、井上宗一郎、ソアレス、LJ・ピークら主力選手が退団。また、ベテランのジェフ・ギブスは現役引退を発表した。町田洋介ACの仙台移籍など、コーチ陣の交代も相次いでいる。

一方で、新加入選手の補強も続いており、2025-26シーズンの新体制には大きな期待がかかる。

まとめ:B.プレミア参入へ向けての次なる挑戦

越谷アルファーズは2026年のB.プレミア参入には至らなかったものの、クラブの方針として2029-30シーズンでの参入を明言している。そのための鍵は「財務基盤の拡充」「アリーナ建設の具体化」「競技力の安定」だ。

B1定着を目指すとともに、地域と共に進化し続けるクラブとして、これからの展開に注目が集まっている。