イゾジェ・ウチェがNCAAシラキュース大学へ進学|Wリーグ新人王が新たな挑戦へ
2025年7月7日、WリーグのシャンソンVマジックは、所属していたセンターのイゾジェ・ウチェの退団と、アメリカNCAAディビジョンⅠのシラキュース大学への進学を発表した。Wリーグを代表する若手スターが海を渡る決断を下した背景には、「自分をもっと成長させたい」「将来的にはWNBA選手になりたい」という強い意志がある。
日本の育成機関を経て、トップリーグで名を上げたウチェの“逆輸入型キャリア”は、次世代アスリートの新たなモデルケースとも言える。
ウチェのプロフィールと成長の軌跡
イゾジェ・ウチェはナイジェリア出身、2004年生まれの20歳。身長188cm、体重75kgの体格を持ち、ポジションはセンター。中学から日本の京都精華学園に留学し、中学・高校時代を通して全国大会で頭角を現した。
2022年にはアーリーエントリーという形でWリーグのシャンソン化粧品シャンソンVマジックに加入。フィジカルと高さを活かしたリムプロテクションとインサイドスコアリングで即座に存在感を示し、1年目からスターターの座をつかんだ。
Wリーグでの2年間|新人王からベスト5へ
ウチェはシャンソン在籍の2年間で着実に進化を遂げ、2023-24シーズンには以下の成績を記録:
– 出場試合数:28試合
– 平均得点:14.6点
– 平均リバウンド:9.9本
– 平均ブロック:1.8本
– フィールドゴール成功率:リーダーズ1位
– ブロックショット:リーダーズ1位(2年連続)
これらの活躍により、シーズンベスト5に選出されるとともに、2022-23シーズンに続いて2年連続のリーダーズ受賞も達成。新人王を経て、Wリーグトップレベルのセンターとして名実ともに認められる存在となった。
また、2023年のユナイテッドカップではシャンソンを優勝に導き、個人としても大会を通じて印象的な活躍を披露。チームの柱としての立場を完全に確立していた。
シラキュース大学とは|NCAAディビジョンⅠ屈指の名門
ウチェが進学するシラキュース大学(Syracuse University)は、アメリカ・ニューヨーク州に本拠を置く伝統ある私立大学。バスケットボール部(オレンジ)はNCAAディビジョンⅠに所属し、男子はジム・ベーハイムHCのもとで全米制覇経験を持つなど、名門として知られている。
女子チームもACC(アトランティック・コースト・カンファレンス)に属し、WNBA選手を多数輩出してきた。近年ではアジア系やアフリカ系の選手の受け入れにも積極的で、多様なプレースタイルに対応できる環境が整っている。
ウチェはこの舞台で、これまでのセンター主体のプレーから、よりオールラウンドなスキルセットの習得を目指すと見られる。
公式コメントに込められた想いと決意
退団と進学の発表にあたり、ウチェは公式HPを通じて長文のメッセージをファンに届けた。
「葛藤はありましたが、自分の成長のために前向きな決断をさせていただきました。Wリーグでの経験は、私にとってかけがえのないものでした。特にアーリーエントリーの時のプレーオフ、三菱電機戦での24点差からの逆転勝利は一生忘れない思い出です」
「これからは、アメリカで新しい環境に飛び込んで、プレースタイルもポジションも新たに挑戦していきたいと思います。最終的にはWNBAという夢に向かって努力を重ねたいです」
これまでとは異なるスキルセット、異なる文化、異なる言語の中での挑戦。ウチェの言葉には不安とともに、それを上回る希望と覚悟が詰まっていた。
WNBAを見据える理由|国際化が進む女子バスケ
現在、WNBAではアメリカ国外出身選手の活躍が目立っており、ナイジェリア、ベルギー、韓国など多様なバックグラウンドを持つ選手が台頭している。
ウチェもその流れに乗る形で、NCAA→WNBAというキャリアを視野に入れている。NCAAディビジョンⅠでの活躍がスカウトの目に留まれば、ドラフト候補として名前が挙がる可能性もある。
特にフィジカルとリム守備に長けた選手はWNBAでも需要が高く、同ポジションのアジア選手としては史上でも数少ない挑戦者となる。
シャンソンとファンへの想い|“またいつか戻りたい”
ウチェのコメントで特に注目されたのは、「またいつかシャンソンでプレーしたい」という一節。異国の地で成長しながらも、自らを育ててくれたチームへの感謝と愛情を忘れないその姿勢は、多くのファンの胸を打った。
SNSでは「寂しいけど応援する」「WNBAで待ってる」「またシャンソンに戻ってきて!」といった声が相次ぎ、ウチェの門出にエールが送られている。
チーム関係者も「彼女の挑戦はチームにとっても誇り。どこに行ってもウチェらしく輝いてほしい」とコメント。まさにクラブと選手の関係が理想的に結実した旅立ちとなった。
まとめ:ウチェの挑戦は“グローバル時代”の象徴
Wリーグという日本国内トップリーグから、NCAAディビジョンⅠ、そしてWNBAを目指す——イゾジェ・ウチェのキャリアは、まさにバスケットボールのグローバル化と選手の多様化を象徴するものだ。
高校から日本で学び、プロでの実績を積み、今後はアメリカの舞台へ。国籍や文化の枠を越えてバスケを続けるウチェの姿は、次世代の選手たちにとっても希望となるだろう。
「覚えていてくれたら嬉しい」——その願いに応えるように、彼女の挑戦を見守る日本のファンのまなざしは、これからも変わらない。