SMBC TOKYO SOLUA、Wリーグ初参戦で注目集まる“兼業アスリート”集団
2025–26シーズンからWリーグに初参戦するSMBC TOKYO SOLUA(エスエムビーシー・トーキョー・ソルア)。三井住友銀行グループを母体とし、女子バスケットボール界では異色ともいえる「仕事と競技の両立」をチームコンセプトに掲げています。
2024–25シーズンから2部制となったWリーグでは、SOLUAは『フューチャーリーグ』からのスタート。開幕戦は2025年10月18日を予定し、そこへ向けた準備と挑戦が始まっています。
本記事では、能登半島地震復興支援「Wリーグサマーキャンプ2025」への出場を通して見えたチームの課題と成長、そして独自のチームスタイルに迫ります。
Wリーグサマーキャンプで得た“経験値”と現実
SOLUAは、2025年7月19日から21日まで石川県金沢市で開催された「Wリーグサマーキャンプ in いしかわ」に参加。これはWリーグと社会人クラブが一堂に会し、プレシーズンのチーム強化を目的とした実戦型合宿イベントです。
SMBC TOKYO SOLUAの試合結果:
- vs 新潟アルビレックスBBラビッツ(フューチャーリーグ)/67−78
- vs ENEOSサンフラワーズ(プレミアリーグ)/51−55
- vs ミツウロコ(社会人)/49−93
3連敗という結果に終わったものの、プレミアの雄・ENEOSに対しては第2Q以降で盛り返す粘りも見せ、試合内容は確実にチームに“気づき”を与えるものとなりました。
ヘッドコーチを務める今野駿氏は、「春から体づくりにフォーカスしてきた成果は少しずつ出てきた」と手応えを語りつつ、「実業団全国大会で当たり負けた経験が今回の強化につながっている」と、過去の敗戦を糧にした成長プロセスを評価しました。
仕事とバスケットの両立──“時間との戦い”を前向きに捉える
SMBC TOKYO SOLUAの最大の特徴は、「プレイヤー全員がSMBCまたはグループ会社の社員として働いている」という点にあります。つまり、フルタイムワーカーでありながら、トップリーグでプレーするアスリート集団なのです。
今野HCはこの点について「他チームに比べればバスケに割ける時間は限られているが、時間管理能力や集中力という別の武器を育てられる」と語っています。
さらに選手たちは、練習後の食事・ケア・移動時間などを“分刻み”で計画し、プロ顔負けのセルフマネジメントを徹底。サマーキャンプ中も、食事やリカバリーに関する意識の高さがスタッフからも称賛されていました。
島村きららが語る「Wリーグと仕事」のリアル
チームの中心として期待されるルーキー・島村きららは、「Wリーグは憧れだった舞台。そこに立てる喜びと、働きながら挑めることの意義の両方を感じている」と語ります。
「仕事もバスケットも手を抜かずにやる。それがこのチームのアイデンティティだと思っています」と話す島村は、自身の成長だけでなく、Wリーグ全体に“新しい選手像”を提示しようとする意識も強く感じられます。
彼女が特に感じた課題は「リバウンドとルーズボールの争い」。小柄な選手が多いSOLUAにおいて、球際の強さは生命線となります。島村は「身長で劣るからこそ、下のボールは全て取らなければいけない」と、課題克服への意欲を見せています。
ENEOSでの経験を武器に、指導陣も“Wリーグ1年目”に挑戦
SOLUAのベンチを支えるスタッフ陣も強力です。
ヘッドコーチの今野駿氏は、女子日本代表およびENEOSでアシスタントコーチを歴任。加えて、マネージャーの成井千夏氏はENEOSおよび代表チームでも経験を積み、トレーナー陣もトップレベルのノウハウを持つ精鋭たち。
「初年度ゆえに全てが試行錯誤」と語る今野HCですが、そうした熟練のスタッフ陣が的確にサポートする体制が、チームとしての“土台の強さ”を生んでいます。
GL3x3への示唆:社会人アスリートの新モデルケース
SMBC TOKYO SOLUAの挑戦は、GL3x3のような新興リーグにとっても大きなヒントを含んでいます。
- 社会人選手の活用: 仕事と競技の両立モデルを支援する仕組み
- 企業×スポーツの連携: チームが企業の価値発信にも寄与
- セルフマネジメント能力: 時間の制限があるからこそ育まれる“プロ意識”
GL3x3においても、フルタイムで仕事をしながら高い競技力を維持する選手たちが活躍しており、SMBCの事例はそうした選手たちにとって大きなロールモデルとなりうる存在です。
目標は“最短昇格”──フューチャーからプレミアへ
SMBC TOKYO SOLUAが掲げるチームの目標は、「最速・最短でのプレミアリーグ昇格」。
そのためにはまず、今シーズンのフューチャーリーグで結果を残し、入れ替え戦へ進出する必要があります。指揮官の今野HCは「まだまだ課題は多いが、一つ一つ丁寧にクリアしていく」と冷静に現状を受け止めつつ、「選手とともに自分自身も指揮官として日々チャレンジしている」と語り、現場の“覚悟”を覗かせました。
まとめ:SMBC TOKYO SOLUAが描く“バスケ新時代”の可能性
SMBC TOKYO SOLUAの挑戦は、Wリーグという国内トップカテゴリーにおいて、まったく新しい価値観を提示しています。それは「時間が限られているからこそ、質で勝負する」という覚悟であり、「仕事も競技も、自分らしく全力で挑む」という信念です。
サマーキャンプで得た課題と成長の兆しを武器に、10月の開幕に向けて準備を進めるSOLUA。その姿勢とビジョンは、GL3x3を含むバスケットボール界にとっても、大きな可能性と未来像を示していると言えるでしょう。
“兼業アスリート”という選択肢が、新しいスタンダードになる日も近いかもしれません。